無口な彼が残業する理由 新装版

「あ、そういえば」

ある日の夜、

ふと思い付いて、私は尋ねてみた。

「青木って彼女いないの?」

パソコンに何か打ち込んでいた青木は

「はぁ?」

思いきりしかめっ面でこちらを向いた。

仲が良いとは思うけれど、こんなことを聞いたのは初めてかもしれない。

飲みにいっても仕事の話ばかりしていた。

少し離れた丸山くんも無表情でこちらを向いた。

「お前、喧嘩売ってんの?」

明らかに不機嫌な顔で突っ掛かる青木。

「何よ。ただ聞いてみただけじゃない」

「それがムカつくんだっつーの」

「ワケわかんない。もういいし」

何で私がムカつかれなきゃいけないのよ。

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