無口な彼が残業する理由 新装版

「俺の片想いだよ」

青木がぶっきらぼうな顔で言った。

「え?」

「だから、片想い。彼女はいないけど、完全なる片想い中」

ふーん。そうなんだ。

でも考えてみれば、彼女がいたら気軽に私と二人で飲みに行ったりできるわけがないか。

「完全なるって……辛いよね」

なんだか、私みたいだ。

切なくなってため息が出てしまった。

「お前が言うな」

「私だって片想い中だもん」

「は? 嘘だろ」

「嘘じゃないもん」

私の好きな人はあんたのことが好きなんだよバカ野郎。

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