無口な彼が残業する理由 新装版
青木は不機嫌な顔を私から逸らして丸山くんの方を見た。
釣られて私も丸山くんを見ると、
彼は少し引きぎみにこちらを向いている。
「おい、丸山」
「なに?」
「お前はどうなんだよ」
バカ、青木。
あんたが丸山くんにそんなこと聞かないでよ。
丸山くんはため息混じりに言った。
「片想い」
胸がチクッと痛む。
息を普通にするのも大変なくらい。
三人の間には何とも言えない空気が渦巻き始めた。
「嘘つけ」
青木がバカにしたように吐き捨てる。
「お前が片想いなわけないだろ」
いくら丸山くんがイケメンだからって、
そんな言い方しなくてもいいのに。
丸山くんの顔も微かに不機嫌になる。