無口な彼が残業する理由 新装版
「好きにすれば良い」
丸山くんが静かに応える。
「言ったな?」
私はまた蚊帳の外。
「ただ」
丸山くんが立ち上がった。
「俺はまだ、諦めたわけじゃない」
そしてどこかへ行ってしまった。
青木は眉間にシワを寄せたまま
「そうかよ」
丸山くんに聞こえない声で呟いた。
私はやっと緊迫した空気から解放されて
無意識に握っていた手の汗をハンカチに吸わせた。
何だったんだ、今のは。
丸山くん、意地になってた。
青木のこと、好きだから?