【完】君しかいらない
逃げるかどうしようか迷ってると、玄関からオッサンが再び顔を覗かせた。


「司は出かけてるみたいだな。悪いが出直してくれ」


「りょーかいっ……あのー、その手離してもらえます?」


女が俺の腕を掴んで離さない。


「あんた……司のなんなの?」


「だから、塾が一緒って言ったじゃないっすか~。今日休んでたから、会いたくなって。

ほら、駅前の予備校ですよー。俺、こー見えても東大狙ってますから、ハハハ」


苦し紛れのウソ……。


ここは、とりあえず陽斗の設定でいこう。






女は訝しげに俺を見てくる。


「アンタ、見れば見るほど怪しいわ~。あの司が、予備校なんて……」


そしたら、オッサンが喋り始めた。


「なんだ、予備校の友達か?

司が真面目に勉強したいって言うから、ちょっと前に、予備校の夏期講習に申し込みしたぞ」


「……えっ、そうなの!?あの子が勉強……信じられないわ」













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