【完】君しかいらない
春奈の押し殺したような、すすり泣きが聞こえてくる。


兄貴?


おい!勝手なこと言ってんなよ!!


体を起こしたいけど、ピクリともしない。


「ゴメン……。昔っから、コイツには苦労かけてるからな……。

いつも、俺のせいで陽斗がイヤな目を見てきてる。

せめて……自分でできることは、してやりたいから」


それ……どーいう意味だよ。


「……うっ……ひっく……」


「なんでだろうな……陽斗が……なんで、こんな目に……。

昔から、いつも思ってた。

コイツは、俺といると……どんどん不幸になる」









「ウウッ……そんなことないっ……」


「そうなんだって……。年が離れすぎてるせいかな、俺に対抗心もってるのがわかってたけど、俺は陽斗がかわいくて仕方なかった。

かわいがればかわいがるほど、陽斗は反発して……」


ガキの頃のことを思い出す。


いつも親にかわいがられ、誉められてた兄貴。


それに引きかえ、俺は……。





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