【完】君しかいらない
同時に、タバコの煙のにおいがしてくる。




「俺が真剣に話してるときに、吸うなよ…」





「吸わなきゃやってらんないのよ……で、あいつ……元気なの?」




一応、気になるってことか?




もしかしてコイツも、誰かに動かされてる口なのか……。




陽斗を誘ったのも、誰かに脅されてとか……そういうことなのかも。




「全然。ほとんど口きいてくれないしな……今はもう、誰とも話したくないって感じで壁をつくってる」




「ふーん……」




「多分……あんたと、同じ」




「え……」




「陽斗は……ずっと、ひとりなんだよ」




「なにそれ……」












「誰かに愛されたいって思ってるけど、いつも上手くいかない。

愛情表現が下手で、不器用。孤独で寂しい。それなのに、いつも同じ人間に固執する」



「なっ…どういう意味よ」



「ホントはもう…好きじゃないんだろ?彼氏のこと…」



「は?なに言ってんのよ」



「好きなような気がしてるだけ。自分を見てくれてたときの、幻影が…忘れられないだけなんだよな」



「違……」



「もう…自分に気持ちが完全に戻らないってわかってるのに、好きだって、言い聞かせてる。

その方が、楽だもんな。不毛な恋愛を繰り返す、自分に酔ってるだけ」



「なんなの…言いたい放題じゃない」



「おー、だからこそ…陽斗は…寂しそうな目をしたあんたに惹かれたんじゃねーの?

きっと、本能で…同類だってわかったんだろ」



「一緒にしないで…あたしは…」



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