【完】君しかいらない
「そう…あたし…逃がしてあげようと思ったんだ」




「…え?」



「ほんとに少しの期間しか知り合ってないのに、急速にあたしを好きになってくれて…。

そんなあたしを助けるために、本気見せられたら…さすがに良心が痛んだ。

…笑っちゃった。あたしにも、そんな人間らしい感情があったんだって」



「陽斗を、逃がそうとしてくれたんだ?」



「まーね。あたしが誰かに拉致られたことにして、呼び出したの。

寸前まで迷ったよ?彼氏を裏切ることになるんだから…だけど、やっぱりかわいそすぎて」



「…………」



「あんたが言うように……同じ物を感じてたのかな。普段は思いっきり人を拒絶してるくせして、

気を許したときの依存率がハンパないの…アイツ。確かに、あたしに、似てるかもね。

だけど……逃げなかった」



「陽斗は…逃げなかった?」



「正確に言うと、あたしの決断が遅すぎて…伝わらなかった。結局、ボコボコにされたんだもんね…」



「今からでも…遅くないから」



「え?」



「陽斗と…また会ってくれないかな」



そうすれば、陽斗だって少しは元気になるかもしれない。



この女だって、少しは…。



「それは…ムリだよ。さっきも言ったけど、あたしのタイプじゃないの。

あたしは…自分と正反対の男が好き。一途じゃなくてもいいから、強い精神力と行動力を伴うような男が。

だから、何度言われても…もう、会わないから」













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