【完】君しかいらない
「だろ?フツーはそーだろ。あの女の感覚、どうかしてるよ。それで陽斗が傷付くことも、全くわかってない」


「…色々…複雑だね」


「だろ?陽斗は、あぁ見えてナイーブだからな。あ、俺はそうじゃないけど?」


奏太くんはニヤニヤしてあたしを見てくる。


「わっ、もしかして、さっきのあたしと母さんの会話、聞いてた!?」


「まーねぇ。だってな、愛梨ちゃんやたら声でかいし…」


「キャーッ、ごめん。ホントにごめんね」


「いや、別にいーけど。だけど何で俺がナイーブだなんて思ったわけ?そんなん言われたことないんだけど」


それは…。


もし、奏太くんが、昔同じマンションに住んでたあの子だったとしたら…。


いつも悲しそうな顏をしてて、ちょっとのことで傷ついてて、


一人で内に溜め込んで、平気なフリをしてるかもって…思ったから。


「…えーっとね。あたし…そういう人、知ってるから…」


あたしがそう言うと、奏太くんが少し首を傾げる。


「そういう人…って?」




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