【完】君しかいらない
「人にはヘーキそうな顏してるけど…実は、傷ついてるの。だけどそういうとこは人には見せない…」


「ふーん。どーかな…俺ってそう見える?」


「奏太くんに…よく似た子が、小学校のときに同じマンションにいて…。あたし、その子が本当は悩んでたのに、何もしてあげられなかった…」


「…………」


奏太くんはあたしを見つめたまま黙っている。


…やっぱりあの子は、奏太くんじゃなかったのかな。


黙ってようって思ったけど、もしあの子が奏太くんなんだとしたら…ここで会えたのも、何かの偶然。


せっかくまた会えたんだから、ちゃんと言っておかなくちゃって気になったんだ…。


「あたしね、その子が…お母さんに、どうして自分は日本人でも外国人でもないのかって、泣いてるとこ、見ちゃったんだよね…。それなのに、ハーフで羨ましいとか、無神経なこと言ってた」


「そーなんだ…」


「うん…。謝りたかったのに、その子その後すぐに引っ越ししちゃって…」


ずっと、心の奥底にしこりがあった。


あたしにも、もっと何かしてあげられることがあったんじゃないかって…。





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