【完】君しかいらない
また再会できて嬉しいのと、何だかわからない感情が、あたしの胸を強く締め付けていた。


「あれから…どうしてたの?どうして何も言わずに引っ越しちゃったの?」


「それは…言いづらかったから。愛梨ちゃんのことだから、お別れ会しようとか言い出しそうだったし。そんなん、照れるしな…」


わ、見抜かれてる!


そうなの。


奏太くんが引っ越ししたあと、気持ちよく引っ越しできるようにみんなでお別れ会してあげたかったね…って言ってたんだよね。


「すごいね…また、こうやって会えるなんて…思わなかった」


「だよな…」


奏太くんは何だか照れ臭そうにしてる。


いつも真っ直ぐ目を見てくる奏太くんにしては珍しく、今はあたしから視線を逸らし、自分のつま先を見つめていた。




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