【完】君しかいらない
「俺、やります」


前に出て来たのは、安元くん。


な…何でここで出て来るの!?


教室の中が少しざわついて、男子のヤジなんかも飛んでくる。


「安元、小中と仲いいもんな~。優し~っ」


仲いい!?


そーでもないけど。


お隣さんだけど、学校以外ではほとんど会話なんてないし、たまにマンションで出会っても、『よぉ』ぐらいしか言われないんだよ?


修理を頼んだ時計を返してくれるときだって、『なおったみたい』ってだけで、大した会話もしてないんだよ?






安元くんはそんなヤジを気にする風でもなく、シレッとした顔で黒板の前に立った。


そして、あたしに手を差し出してくる。


「え?」


何、このジェスチャーは…。


ポカンと口を開けてると、


「さっさと貸せよ」


って小さい声で呟き、チョークをひったくられた。




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