甘恋集め


「その大切な人って、透子ちゃんの……恋人?」

いつの間にか、山崎くんと並んでいた。
前を歩く三人は、相変わらず興奮した様子で足元もおぼつかない。
まだお酒も飲んでないのに酔っぱらってるみたいだ。

少し離れて歩く私と山崎くんは、会社帰りの人ごみを抜けながら、ゆっくりと歩いている。

時々私に向けられる山崎くんの視線に、ほんの少し違和感を感じる。
人ごみを抜けながら歩いているとはいっても、なんだか近いように感じる二人の距離も、慣れない。

「透子ちゃんって、特別に付き合ってる人はいないって言ってたよね」

静かな声。それはいつもの山崎くんだけど、どこか震えているように感じるのは気のせいなのかな。
そっと隣を見ると、眉を寄せて、どこか苦しげな瞳が私を見つめている。

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