甘恋集め
「そのこと、美乃ちゃんは知ってるのか……?」
巧さんの声は、私を気遣うように聞こえた。
「私の10歳の誕生日に、両親が教えてくれました。
私と両親には血の繋がりがないという事や、施設から引き取られたと、聞かされているんで、私に気をつかわないでくださいね」
落ち着いた声ではっきりとそう答える私に、巧さんも真里さんも驚いた表情を向けて黙り込んでいる。
おじさん、これまで二人には言ってなかったんだな。
「そりゃ、血の繋がりのない娘だと聞かされた時にはかなり苦しんだし悲しくてどうしたらいいのかわからなくなって。
まだ小学生の私には自分の居場所もわからなくなって不安定で、今思い出してもつらいですよ」
ふふふっと肩をすくめると、巧さんの悲しげな瞳に気づいた。
私を可哀そうだと思うその瞳、それって私には必要ないし、逆に迷惑なのに。
私は可哀そうな子じゃないし、両親に愛されて幸せだったのに。
両親はもういないけれど、両親が私に注いでくれた愛情が、今の私を支えてくれている事が、私の幸せだった過去の証明。
「私が不安定になる事は、両親には予想できた事だったから、私の気持ちに整理がつくまで、ずっと側にいてくれたんです。
何度も抱きしめてくれて、両親と私には愛情という絆があるって言い聞かせてくれて。
たとえ血の繋がりがなくても幸せに暮らしていこうって、気持ちが固まるまで私の体温を感じる距離にいてくれたから、血の繋がりなんて忘れながら暮らしてました」