甘恋集め
この場に二人しかいないような、周りを気にしないような甘い声で巧さんがそう呟いた。

膝に置かれた真里さんの手をぎゅっと握りしめて、その手ごと一緒にぽんぽんと上下させて、まるで真里さんを励ますよう。

「真里が、どうしても妊娠に向けた治療を続けたいなら協力する。そうする事が真里にとっての幸せなら、それが俺にとっても幸せだから。
でも、それだけが幸せじゃない、他にも選択肢があるって事は忘れずにいろよ。
この先にどんな結論を出しても、俺は真里さえいてくれればそれでいいから」

真里さんの瞳をじっと見つめる巧さんの声は初めて聞く声音。

あまりにも優しくて甘くて、私まで溶けてしまいそうだ。

隣の駆を見ると、彼の顔も少し赤くなって照れている。

そりゃそうだよね。何といっても会社では専務として厳しさ全開で仕事に集中している巧さんだもん。驚くのも当たり前だ。

プライベートでは、奥様の真里さんにどっぷりべったりの巧さんしか知らなかった私も、会社での様子を初めて見た時にはかなり驚いたっけ。

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