甘恋集め
「で、美乃ちゃんの結婚だが」
柔らかくふんわりとした空気に包まれた空間で、みんなが巧さんと真里さんに視線を向けている中、おじさんの声が響いた。
はっと顔を向けると、何やら拗ねているように口を歪めているおじさん。
その顔からは、私と駆の結婚にはまだ反対しているようなオーラがありあり。
やっぱり、だめなのかな。私がとしくんと結婚する事をまだ願ってるのかな。
私も、駆も緊張しながらおじさんの言葉を待った。
「あー、結婚は、認める。っていうより、俺は美乃ちゃんが幸せになればそれでいい。利也くんと結婚して俺と正真正銘の身内になって欲しかったけど。
……本当、残念でたまらないけど、あきらめるさ」
乾いた声で、ところどころつっかえながら、おじさんはそう言ってくれた。
その目はほんのり潤んでいて、泣いてる。
天下の『KH建設』の社長なのに、こんなに簡単に泣いてる。
……ごめんね。
「おじさん、ありがとう。反対されても結婚するつもりでいたけど、やっぱりおじさんには賛成して、祝って欲しかったんだ。ありがとう」
「んー。仕方ないか。あの日、橋本にジャンケンで負けてしまった時からこうなる運命だったんだろう。美乃ちゃんが俺の身内になるなんてこと、ないんだよな」
がくっと肩を落とすおじさんが、なんだか普段よりも小さく見えた。
会社で胸を張って歩く社長が、今こんなに寂しそうにしてる。
それだけ、私を大切に思ってくれてるんだろうと思うと、胸が熱くなる。
「おじさん、私の結婚式では一緒にバージンロードを歩いてね。
私が働く会社の社長だからじゃなく、父親代理でね。
代理ってのは言葉悪いか……でも、一緒に歩いてください」