甘恋集め
しばらくの間頭を下げていた駆は、体を元に戻すと小さく笑った。
「治療する可能性は低いですが、美乃が望むのなら、考えます。
それに、美乃のように、実の親からの愛情に縁のない子供と一緒に暮らすことも考えてます。
僕は、たとえ血の繋がりがない両親に育てられても、その子は美乃のような素敵な女性に育つんだと、幸せになれるんだと。
それを知って、美乃と結婚してもいいんだと思ったんです。
僕のように女性に子供を授けられなくても、美乃と結婚して幸せになってもいいんだと、許された気がしたんです。
だから、どういう選択をするにしても、僕たちは幸せになります」
落ち着いた声で、一息にそう話した駆は、そっと私の手を握った。
いつもよりも冷たく感じるその体温。
やっぱり緊張しているのかな。
見た目は穏やかで静かなのに。
……そりゃそうだよね。
とりあえず、私の親代わりの人に結婚の申し込みに来たんだし。
その相手は社長だし、そりゃ緊張するよね。
ゆるく握られた手を、私の手できつく包み込んだ。
瞬間、はっと震えた駆の体に気付いて一層愛しさが募る。