甘恋集め
「あ、その。寝てはいないんだ。みんなの意見に圧倒されて、何も言えなくて」
「は?専務ですよ、あなたは専務。ちゃんと社員を引っ張っていってくださいよ。ぴしっと」
「ぴしっと引っ張るのは社長の仕事だしな……。俺は、設計しかわからんから」
「そ、それは逃げの言い訳だっていつも言ってるでしょー」
出た。
大きく叫んだ美乃ちゃんは、顔を真っ赤にしてる。
反対に真っ青な顔の専務。
美乃ちゃんと東条専務。二人はいつもこうだ。
人が良くておとなしめ。
出世欲なんて何も感じないのに何故か専務をやっている東条専務の事が大好きなくせに、ううん、大好きだからしっかりして欲しくて、いつも叱咤激励。
そんな美乃ちゃん、一生懸命に東条専務を支えてるんだけど。
何かと手のかかる専務に対して、こうしてたまに爆発。
あーあ。本当に不器用だな。
専務の事が気になって仕方がないって素直に言えばいいのに。
このままだと、いつまでたっても秘書課に平穏は訪れそうもない。
そろそろ、私の出番だ。