甘恋集め
私と二人きりの時には決して見せない、わざとらしくて甘い微笑み。

その面倒くさい微笑みを、としくんから向けられる度に、そっと結花ちゃんをうかがうと。

今にも泣きそうな顔で私達から目を反らしてる結花ちゃんがいて、そんな苦しげな様子の結花ちゃんに満足そうな表情のとしくんがいる。

この男、優しい顔してどこまで意地悪なんだ。

『あの切ない顔が、すっげーそそるんだよな。俺の事、ちゃんと想ってくれてるって確認して、まだ大丈夫ってわかるからほっとするし』

そんな理由で私に笑顔と優しさを安売りする彼の気持ちがうざったい。

結花ちゃんが不憫だって思う。

ただでさえ悩みに悩んでる結花ちゃんの片想い。

本当は両想いなんだけど。

としくんの態度が結花ちゃんを一層深く悩ませてると思うと、腹が立つ。

それでも、としくんと結花ちゃんの気持ちが寄り添えないのは、私のせいでもあるから、としくんを責める事もできないし、結花ちゃんが納得する励ましの言葉を言えるわけでもない。

二人の悲しい時間の元凶は、私だ。

私が高橋のおじさんにはっきりと言えないのがきっかけ。

そして、駆との将来もしっかりと築けない。

ゃんと、ちゃんと全部解決するから。

二人とも、ごめんね。もうすぐだから。

本当に、ごめんね。

いつも心の中で謝ってる。

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