甘恋集め
けれど、幸せに暮らしていた両親は、私一人を遺して死んでしまった。

隣家に押し入った強盗と運悪く遭遇して、包丁で刺された両親。

二人が次々と刺される現場を、ちょうど訪ねてきた高橋のおじさんが目撃したのは偶然以外のなにものでもない。

すぐに救急車で病院に運んだけれど、二人は助からなかった。

二人は息絶える間際に、『美乃の事を頼む』と高橋のおじさんに何度も言った。

両親の死を目の当たりにして、高校生だった私は、高橋のおじさんの胸で泣いた。

それからは、その時の高橋のおじさんの胸の温かさだけを頼りに生きてきた。

高橋のおじさんは、私にとっては大切な人。

私を生かしてくれた恩人だから、

『利也くんと結婚しないか?』

その言葉を自然に受け入れた。

特に好きな人もいなかったし、としくんの事、嫌いじゃなかったから。

今となってはなんて安易な決断をしたんだろうと後悔ばかりだけど、その時はそうするのが正しいって思ってたんだ。
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