らくがき館

花

桜舞う。


子供ではなくなる日。
大人になった訳でもない。
でも、明らかに何かが変わる。
感傷的になる、特別な日。



「先輩。卒業おめでとうございます」


香山はいつも通り笑った。
俺は礼を言って、香山の頬を撫でた。
香山は擽ったそうに首を捻る。
笑う。
いつもと同じように、戯れるように。

俺は教室で貰った真っ赤な花を、香山に渡した。
花の名前は知らない。
香山は花の匂いを嗅いで「きれい」と呟いた。

お前の方がきれいだよ

なんて昭和の三流ドラマみたいなことはさすがに言えなかったけど、香山はやっぱりキレイで、可愛くて、俺にとっての花だった。


桜の下で何をするわけでもなく、離れがたくて、いつまでも大して意味のない会話を繰り返す。
学校を出ても会うこともできるのに。
永遠の別れでもないのに。
春休みには遊ぶ約束もしたのに。

それでも、香山に出会えたこの学校が恋しくて仕方なくて、いつまでもここに居たいと思った。

馬鹿なカップルだと思うだろう。
俺が傍観者なら、男に思いっきり蹴りを入れてるところだ。

でも、例え誰がどう思おうとも、俺は本気でこの時間が永遠に止まればいいと願った。


寂しいわけじゃなく、切なくて、俺は香山を優しく抱き締めた。
香山の腕が俺の背中に回るのを感じる。


「先輩、すぐに追い付きますからね」


香山はもう一度、耳元でそう言って笑った。





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201503

昔はこういうのばっか描いてたけど、実際こんな高校生いたら痛すぎるわ。

最近昔の小説見つけてね。
すごい楽しかった。
続きが読みたかった。笑