知らなくていい
00.
暗く、曇った空。なんだかやる気もでないような天気だ。
いつものように制服のポケットに手を突っ込んで、
あくびをぽわわん、と吐いた
真似するように鳴く猫を横目で眺めてため息ひとつ。
通学の途中。とっくに授業は始まっているが、
のんびりとひたすら歩く。そんな時、
「東雲さーんっ!おはようございます!」
元気な声がやけに頭に響く。頭痛がする。
この声はきっと、私の知り合い。
「おはよ」
「名前覚えて頂けましたかっ?緒形です!」
確かこいつは昨日、私の元へ突然やってきて
友人になってくれ、と頼み込んできたヤツだ
「緒形な。」
「ハイ!やっぱりかっこいいなぁ東雲さんは!」
何がかっこいいんだ、このダメ人間のどこが。
いつもそうだ。かっこいいだの口先だけで褒めて。
私のことを深く知ったならばささっと去っていく
「アホらし」
そう呟いて、歩くペースを速めた
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