短編集
「風のように」
「姫様の幸せは?」
それは、いのりひめの作品の数々。
「この本には、いのりひめさんが辞める時に書いた文章と、過去の作品から人気の五本の童話が書き込まれているんだ」
え、そんな本が出てるなんて知らなかった!!
「ってことは、それ全部いのりひめの……?」
新谷くんは、笑ってうなずいた。
「他に、どの作品が入ってると思う?」
「私は……姫様の幸せは?が好き。なぜか惹かれるの」
王子様とお姫様の、叶わなかった恋。
バッドエンドなのに、切なくて、それでも未来を諦めない強さを教えてくれる……そんな、優しい作品……。
「君だけじゃないみたいだよ?」
そう言って開いて見せてくれたページには、読み慣れたそれが書かれていた。
何回も読み返した。
これを書いているとき、いのりひめさんは何を思っていたのだろう?
ずっと抱いていた疑問。
なぜ突然姿を消したのか。
それと、この話にある王子様は、一体どこへ行ってしまったのか……?