短編集
お母さんには、転校生の新谷香月くんのことを話してある。
イケメンだしね。
「そう!それでね、新谷くんもあたしの好きな作家さんの本持っててね、今日借りてきちゃった!」
母は夕飯作りを再会しながら、聞いてきた。
「作家さん?漫画くらいしか読まないのに?」
「童話作家なんだけどちゃんといるもん!すごいんだから!」
「……へぇ〜、じゃ、見せてみ?」
母にそう言われて台所で自慢げに見せた瞬間、お母さんの顔が凍りついたように固まった。
驚きを隠せないといったような顔で……。
「お母さん……?」
「……なんで?」
……なにが――?
母は、手に持っていた包丁をまな板に置き、『いのりひめ』を手に取った。
「なんでコレをアンタが……」
「……し、新谷くんに……借りたんだよ……?」
「違うの、違うのよ……。なんでアンタが知ってるの?」