短編集
『いつかまた逢えた時に懐かしく思えるように……』
そう言ったお母さんに……私を通じて再会のチャンスが来たんだ。
「それじゃ、いつでもいい。けど近いうちに二人を会わせてあげたい!」
「……それが……」
――希望は、絶たれてしまった。
そもそも新谷くんが転校してきたのは、そのお父さんと別居したためだったのだ。
王紫さんは、新谷くんが前に住んでいた町にいるのだろうか……?
それなら会えると思ったけど、以前の家自体を手放してしまったために、今は居場所が分からないらしい。
……会えるチャンスだと思ったのに……。
もう少し早く、彼と出会えていたら……そんな気持ちを、母を見る度に捨てきれずにいた。