短編集


それは、三日前のことだった。


放課後、新谷くんは先生からの呼び出しがあり職員室へ行っていた。

あたしは、放課後いのりひめさんについて色々語ろうと約束していたので、彼が来るまで待っていた。


数十分後、ようやく戻ってきたと思ったら、あわてて私に言った。


「父さんが事故にあって、重症だって!!」


あたしはいきなりのことで、驚くことしかできなかった。

どうすればいいのか……全く頭が働かなくなって……。


「やっと居場所がわかった!利根(とね)病院にいる!!」


その病院は、あたしの家のすぐ近くにある病院だった。

王子と姫は、もうこんなにも近くにいたのだ。


「お母さんにすぐに病院に行くように伝えて!!」


働かない頭の中、あたしは慣れた操作でケータイから母を探し出す。

数コール後、聞き慣れた母の声に、王紫さんの事を伝えた。


電話越しに電話を落とした音と、同時に床を走る音もした。

きっと病院に向かったんだ……。
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