短編集
それから三日後の今日、姫と王子は本当の、永遠の別れを告げたのだ。
母は、彼の最後を教えてくれた。
それをあたしは、新谷くんに伝えた。
「お母さんが病院に着いたときね、王子様が目を一瞬だけ開けたんだって。そして、目を細めて幸せそうに……逝ったんだって」
今は新谷くんと、公園のベンチに二人で座ってる。
あの日、お母さんから聞いたことを、新谷くんに話した。
新谷くんは微笑んで、その笑顔のまま言った。
「王子様は今でも姫を愛しているんだよ」
「……え?」
今でも、愛してる……?
「昔、父さんが言ってた。今思い出したんだけど、こういうことだったんだ……」
お母さんのことを、新谷くんのお父さんは――王紫さんは、忘れてなんていなかったんだ。