短編集
出会ってから今までずっと、ひとりの女性を愛し続けた人。
病院での、眠っているんじゃないかというほどのきれいな顔が、まぶたに蘇る。
今、私の隣にいる人の分身のように、きれいな顔だった。
「愛の形って、いろいろあるんだよ。異性を愛すること、子供を愛すること、一人の人間として愛すること」
「……うん」
「父さんはきっと、過去の人として、君のお母さんを愛していたんじゃないかな。俺の母さんと出会ってからも、母さんとはまた別の感情を持ってたんだよ」
それを聞いて、思う。
「あたしのお母さんも、そうだと思うよ。愛していたからこそ王紫さんに届くように作品を生んで、お父さんを愛したから作品は作らなくなった。それでも、一度愛した人を忘れることはできないって言ってた」
二人とも、同じだった。
そしたら次は、その子供であるあたしたちが出会った。
「僕もさ、ひとりの女の子を、一生愛していたいんだよね」
不意に新谷くんが、あたしの方を向いて言った。
「それって、ステキなことだと、思わない?」