短編集
――四月
そんな想いを抱えつつ、あの人に出会えたこの春に感謝します。
「ナミナァ〜!」
始業式後、教室の自分の席にて、あたしは去年と変らない聞きなれた声に、廊下へ振り向いた。
そこから登場したのは、困った顔をしている、親友の安野詩織(やすのしおり)。
ちまちま動いて、いつでもかわいいのが特徴。
ちなみにおっちょこちょいで、天然。
あたしの机の前に来て、机に手をついて身を乗り出してきた。
「どうしたの?」
「たいへんなのっ!付き添っていこうとしたら泣かしちゃったみたいで!」
付き添う……?
この子の発言には、毎度悩まされる。
親友よ、誰とどんな状況でそうなったか、しっかり説明してくれよ。
「はいはいしーちゃん、しっかり説明頼みますね〜」
あやすようにあたしは聞いた。