短編集
「でも、それは断る理由にならない。なっちゃいけない。二人は想い合ってるんだから……もう、遠慮する理由なんか、ないよね……?」
詩織は気づいていたんだ、あたしの変化に。
あたしたちの、変化に……。
「波那、ごめんね。病院行った帰り道に通りかかったら二人が見えて、気になって盗み聞きみたいなマネして……」
いつから、いたんだろう……?
「親子そろって出会うなんて、偶然なんかじゃないと思うよ」
ふっと笑って、詩織は口パクでメッセージを残し、手を振って帰ってしまった。
残された、あたしたち二人。
応援してくれた、詩織。
『運命だよ』
ここは、本当の気持ちをぶつけるしかないよね。
「新谷……香月くん」
詩織が去って行った方向を向いていた新谷くんが、再びあたしの方を向いた。
「あたし、香月くんが好き」