短編集
絵心
私が高校に入学してから二週間。
最近クラスの女の子から、ある名前をよく耳にするようになった。
『萱瀬癒那(かやせゆな)先輩』
私は他のクラスに友達がいたりはしないから、あまり教室から出ないし、見たことがないから、顔もしらない。
あまり主張できないタイプだから、言ってしまうと友達が少ない。
先輩の知り合いもいなかった。
でも、その出会いは突然だった。
友達のゆいちゃんとゆかりちゃんと、移動教室から教室へ帰って行く時。
「あ、萱瀬先輩だ」
「嘘!?あ!萱瀬先輩!」
最近聞きなれた名前。
『萱瀬先輩』
二人の視線の先をたどると、何人かの人に囲まれている人がいた。
名前を聞いて反応したのか、こっちを向いていたので、私は反射的にサッと顔を下に向けてしまった。
あの人が、『萱瀬先輩』。