短編集
「あ、ゆいちゃんとゆかりちゃんだ。そっちの子は?見たことないけど……友達?」
話の矛先が私に向いて、少し焦る。
話の中心になるのは避けたい。
特に、人気がある人に話題にされると、どうしていいのか分からなくなってしまうから、早く教室に帰りたい。
――普段ならそう思っているはずなのに。
彼の声色、雰囲気を、もう少し感じたいと思ってしまっていた。
第一印象は、優しそうな先輩。
「この子は秋和未妃です。同じクラスの友達なんですよ」
ゆいちゃんが返した。
その答えを聞いて、視線が私に向いた。
「未妃ちゃん?初めまして、萱瀬癒那です」
「……ど、どうも、未妃です」
ジッと見つめられると、緊張してしまう。
見つめ……というより、何か、見定められているような、真剣な目……。
「……未妃ちゃんて」
「……はい?」
「絵に描かれるの好き?」