短編集


放課後になり、私は先輩に指定された美術室へ向かった。


ドキドキする。

絵のモデルになんて、中学の美術で似顔絵描かれた時くらいしかない。

いつの間にか、楽しみだと感じている自分がいた。


美術室に着くとすでに先輩は来ていて、絵を描く準備をしていた。


「未妃ちゃん!来てくれたんだね」

「あ、はい」


今更ながら、緊張してきた。

緊張をほぐそうと、自然と私は先輩に尋ねていた。


「あの……先輩、なんで私を描こうと思ったんですか?」


口に出して、しまった……と思った。

もしかしたらあの時の表情は、振れてはいけない事に対してだったのかもしれないじゃない!


そう思っていると、先輩は一瞬寂しそうな顔をして話してくれた。


「実はね、去年までここは美術部が使っていたんだけど、部員が足りなくて廃部になったんだ」

「え……」
< 40 / 115 >

この作品をシェア

pagetop