短編集


気付いてたから、言いたくなかった。

勝ち目なんてない。


怖い……。


でも、それは先輩もだと思う。

二人は付き合っているわけではない。

亜綱先輩と最初に会った日の後、萱瀬先輩に聞いたから。


ひょっこり現れた私……萱瀬先輩の今回のモデル。

亜綱先輩からすれば、私の存在こそ怖いと思う。


それでも、先輩は私と向き合う。

逃げない。


自分の気持ちがはっきり言える先輩は、やっぱりすごいと思った。


「そろそろ少しは考えた方がいいよ」

「……はい……?」

「マイペースな癒那のことだから話したりとかして、普通の人よりペースが遅れてるくらいなんでしょ?」


当たってる……。

それはつまり、亜綱先輩がずっと萱瀬先輩を見ていたということ。


< 48 / 115 >

この作品をシェア

pagetop