短編集
気付いてたから、言いたくなかった。
勝ち目なんてない。
怖い……。
でも、それは先輩もだと思う。
二人は付き合っているわけではない。
亜綱先輩と最初に会った日の後、萱瀬先輩に聞いたから。
ひょっこり現れた私……萱瀬先輩の今回のモデル。
亜綱先輩からすれば、私の存在こそ怖いと思う。
それでも、先輩は私と向き合う。
逃げない。
自分の気持ちがはっきり言える先輩は、やっぱりすごいと思った。
「そろそろ少しは考えた方がいいよ」
「……はい……?」
「マイペースな癒那のことだから話したりとかして、普通の人よりペースが遅れてるくらいなんでしょ?」
当たってる……。
それはつまり、亜綱先輩がずっと萱瀬先輩を見ていたということ。