短編集
「今日進行状況見せてもらったけど、あれくらいだと明日辺りには完成する」
先輩は、見ただけで予想がついていた。
あたしは、あと少しだということだけは分かってたけど、そんなに完成に近づいていたなんて思っていなかった。
「別れは確実に近づいてるんだよ?そろそろ色々考えたら?」
亜綱先輩は廊下へと向かう。
「亜綱先輩!」
私の声に振り向いて、先輩は言った。
「あたしは……美術部から逃げた身だから、癒那に好かれてない」
それだけ言って、行ってしまった。
美術部から……逃げた?
つまり……美術部だった?
この学校に、美術部はない。
逃げたって、どういうことだろう……?
とにかく、萱瀬先輩のところに向かわなければ。
そう思って、私は美術室に向かった。