短編集
このマイペースさに引きずり込まれる人も少なくないという……。
それにあたしも含まれる。
ふと気付くと、ザワザワ、教室がざわついて来た。
そういえば、今日から転校生が来るらしい。
教室のドアが開き、先生が入ってきた。
軽く連絡事項を言った後に転校生を呼び、黒板に名前を書く。
緩やかな動きで教室に入ってきた、見慣れない顔。
でも、なんだろう……吸い込まれるように魅入ってしまう。
あたしだけじゃない。
クラス全体がそうだ。
彼の雰囲気と、整っている顔から、目が離せない。
「新谷香月(しんたにかづき)くんだ」
「新谷です。よろしくおねがいします」
それが、新谷香月との出会いだった。
新谷くんは、おとなしめでかっこいい顔立ち。
静かで優しい雰囲気がまた、クラスの女子の瞳を恋モードに染めていく。