短編集
先輩が、すごく緊張している。
その緊張が伝わって、私も緊張する……。
「未妃ちゃん」
「は、はいっ……」
あ、焦るな私……。
深呼吸、深呼吸……。
先輩に気付かれないくらいの、小さな深呼吸を数回繰り返した。
少し落ち着いた。
「俺、この絵描いてる時、すごく楽しかった。未妃ちゃんといる時間がとても幸せだったんだ」
「……はい」
私も、先輩と一緒にいられる時間は楽しくて、とても幸せでした。
その思いを……今は我慢して、先輩の言葉に耳を傾ける。
先輩は、大きく一つの深呼吸の後、言った。
「これからも、俺にこの幸せを与えてくれないかな?」
「……え?」
時が一瞬、止まったように感じた。