短編集
優紀には、本当に羽が生えた。
背中に、その蝶と同じ、キラキラと輝く羽が。
そして優紀は、空を自由に飛べるようになった。
噂は本当だった。
このことを誰かに知らせたい。
飛べるようになった姿で、優紀はまず親友に会いに行った。
しかし無視される。
なぜ?
気付いてない……?
――見えていない――?
不安に駆られる。
蝶を触れた辺りまで戻ってみると、自分が横たわっていた。
母が激しく泣き、救急車まで到着している大騒ぎ。
どういうこと――?
頭から出血が止まらない自分の近くには、トラック。
まるで、私を避けようとしたかのような、トラックのものと思われるタイヤの跡
何が起きているのか、理解出来ない。
理解、したくない。
分かることはただ一つ。
私はここにいて、体はそこにある。
幽体離脱を、しているということ。