短編集
盗みは犯罪だと教えられてきた。
そんなの当たり前だけど、そんなこと知るかな人もいる。
――でも
アレだけは
決して盗んではいけない――
「よし……誰もいないな?」
駅の駐輪場。
雨の降る中、雨具を忘れた少年祐斗が、自転車のなかの傘を持って行こうとしていた。
――盗み――
「派手なピンク〜……無いよりマシか。ちょっと借りま〜す!返さないけど」
そういない自転車の持ち主に向って言い、傘を持って行こうとした。
その時、その自転車が目についた。
少しボロくて、ペダルがない。
血に染まったような、真っ赤な自転車。