短編集
「ほら、また」
そう言われて気付く。
また、キスをしていた。
そしてふと思い出す。
キスに捕らわれすぎて、うっかり自分のこだわりの部分を言い忘れていた。
「俺、お前と出会った時、まずその唇に惚れたんだ」
「はぁ……?」
そう言いながら、さらに頬を赤らめる彼女。
「な、何それ、聞いてないし!」
「言った事なかったからな。それから気になり出して、いつの間にか話しかけてて、それから……」
そうだ。
君の唇に惹かれて、君の声に惹かれて、君の性格に惹かれて。
それから君自身に。
「心を奪われた」
眩しい朝日にも目が慣れて、彼女の顔もはっきりと映る。
俺の愛しい、ステキな彼女。