短編集


久々の部長との対面に、わたしは目をそらす。

正直、この人は怖い。


「アンタ一ケ月も練習休んで、バカじゃないの!?」

「スミマセン……。あ、でも勝手にアドレス交換しないで下さいよ」

「ん?何のこと……あぁ、これはこれは」


部長が距離を詰めてニヤリと笑う。

――しまった。


「ははーん、そうかそうか。黒沢泉、確かに10年も一緒なら好きにもなるか」

「な……!!ち、違います!からかわないでください!!」


部長の言葉にムカついて、コートに立ってからはひたすらにボールを打ち返してやった。

部長、ムカつく……!


「あれ?」


気付いた時には、泉はいつもいるはずの定位置にいなかった。

いつもはあの角でみているはずなのに……。


でも、少し離れたところにその姿は見えた。

誰かと話している。

あぁ、同じクラスの友達か。


ちょっと疲れた。

泉にスポーツドリンク買いに行かせよう。



< 88 / 115 >

この作品をシェア

pagetop