短編集
「……あのさ、悪いんだけど……」
ふと、新谷くんがあたしに話しかけて来た。
「なに?」
整った顔に、あたしもドキドキせずにはいられない。
それでもいつも通りを装う。
「……まだ……名前覚えてないんだ僕」
……あぁ、そっか。
まだ学校に来たばかりだし、男友達の名前覚えるのすらも大変なのに、女の子なんてもっと分からないよね。
「さっき逃げちゃったのが安野詩織、あたしの親友。で、あたしが宮崎波那ね。よろしく」
彼の笑顔につられて、あたしも自然と笑顔になる。
「波那ちゃん?かわいい名前だね」
その言葉に、思わずドキッとしてしまった。
慣れてないよ、そんな言葉……。
「詩織ちゃんは……なんだか微笑ましいね」
「そうなの!詩織はちまちましてて行動も思考もかわいいの!」