短編集
リビングの扉を開くと、ソファーに座ったまま泉は寝ていた。
どうして……?
扉の音に反応したのか、泉の目が開いて、わたしをとらえる。
「……お嬢様」
「……黒沢さんは?」
「先に帰りました」
「あんたは……ここでなにしてるのよ?」
「麻衣お嬢様を、お待ちしていました。お夕食がまだでしたので」
そうだ、2人の仕事は、わたしが夕食を食べ終わるまで、だ。
でも、それならなぜ執事の黒沢さんが先に帰ったの?
「食事にしますか?」
「こんな夜中に、食べる気になれないわ……」
太る。
でも正直、お腹がすいた。
「朝食と置き換えれば、問題ないかと」
「ずいぶんと早い朝食ね。いいわ、ちょうだい」
「かしこまりました」
彼はまだ執事ではない。
下僕。
下僕の仕事は、私の身の回りの世話全般。