短編集
「寂しくなるわね」
「会おうとすればいつでも会えます。父ですから」
「確かに」
その後は、静かに食事を進めた。
黒沢さんは、話す機会を与えるために、先に帰ったんだと、後で気付いた。
食べ終わり、食器を洗う彼の後姿に話しかける。
「イギリス、どうしても行きたいの?」
「はい」
「絶対に戻ってくる?」
「はい、必ず戻ります」
わたしだって、執事がいなくなるのは困るわ。
そういうことなの。
だから。
「好きにしてちょうだい」
必ず戻ってくるのなら、わたしは耐えられる。
「それは……」
「勝手にイギリスでもどこでも行っちゃえ。でも、絶対に早く戻ってくる事が条件」
「はい」