運命に導かれて 番外編
「失礼いたします。お忙しいところ申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか?」
静かに入室してきた人物は期待していた人物ではなくルカは肩を落とすが、それでも執務室を訪れることが皆無に等しい人物に、羽衣のことだろうとすぐに気付く。
「アリー…。羽衣のことだろう?」
いくら考えても怒りの種がわからない以上、今はアリーだけが頼りだ。
本来なら羽衣本人に聞くのが一番だということは、ルカとて承知の上だが、それが上手くいかないだろうことも十分知っていた。
今ルカができることといえば、アリーが今から話すだろうことをしっかり受けとめることしかない。
「申し訳ありません。本来であれば当人同士でお話するのが良いことくらい承知していますが、今の羽衣様はルカ様を避けているようでしたので…。」
避けていると言われてルカはグッと喉を詰まらせる。
今まで執務室を離れることが出来ずにいた為に避けられているとまでは考えていなかったのだ。
「そうか……。で…羽衣はどうしている?」
ショックを隠せず、意図せずして溜め息が言葉に混じる。
手元では、視線で辿るものの中身は一切脳裏に入ってこなかった書類がぐしゃりと歪んでいる。