運命に導かれて 番外編
「あなたが何故ここに?」
本来なら主の去ったそこに一介のメイドがいるべきではない。
アリーとて、それはよくわかっていた。
だが如何なる理由があるにしろ、そこに残る形になってしまった以上説明責任があるだろう。
「申し訳ありません。実は…」
アリーは事の次第をかいつまんで話した。
よく見なくても、目の前のジャンの眉間に深く皺が刻まれていくのがわかる。
全て話し終わった時には盛大な溜め息が聞こえた。
「アリーもご苦労様でした。今日はもしかしたらもう此処には戻らないかもしれませんね。我々は声がかかるまで別の業務に当たるとしましょう。」
書類の束は元通りデスクの上へ整え、静かに2人は主が戻らないであろう執務室
を後にした。