運命に導かれて 番外編
ジャンの言葉尻に被せてくる羽衣の言葉は正に今ジャンが言おうとしていたそれで……。
「……はい。」
今まで羽衣がルカの邪魔をしている光景など見たことはない。
寧ろ羽衣が顔を見せることによってルカのやる気も一段と増すようだった。
ただ……。
羽衣にその気はなくとも、ルカの方が本能に負けることもあるようで。
ジャンがその事実を知っているかどうかはわからないが……いや、あれだけ有能な執事であればわかっているからこそ、敢えて羽衣に釘をさすのかもしれない。
そんなジャンの心境など知る由もなく、羽衣は楽しそうにワゴンを押して執務室へと向かう。
アリーは見慣れた光景に笑顔を溢すと、空になったティーカップの片付けを始めた。
羽衣がアリーを中庭でお茶しようと誘う時、それはイコール執務室へ行きたい時、基、ルカに会いたくなってしまった時だということを知っているから。