運命に導かれて 番外編
―――コンコン―――――
「入れ。」
「失礼します。」
「……羽衣。」
羽衣がこの時間に執務室をノックすると、中から聞こえてくるのはいつも無愛想な返事だった。
それが扉を開けて、羽衣を視界に捕えた瞬間………
ルカの顔はこれでもかというほどに緩む。
羽衣はその変化が好きだった。
「紅茶をお持ちしました。」
ルカの座る広い机にそっとカップを乗せる。
「またジャンの仕事を奪ったのか?」
ルカがクスクスと笑う。
「一応交渉したんだよ。ルカに会いたくなっちゃったから。」
「……っ//」
「ちゃんと休憩して、またお仕事ファイト。」
羽衣は拳を握ると、それを小さくあげてみせ、邪魔をしないようにと踵を返そうとした。
――パシッ――
「きゃぁっ。」
「帰すわけないだろ。ほらこっち。」
つい数秒前に拳を握っていた手は、机の向こう側からグッと伸ばされた手に捕まっていた。