声にならない言葉
止められない…
夏も終わり、肌寒い風が吹き始めた頃…

美羽は一人暮らしを始めてから、友達も遊びにきたり、誘ってくれたり、楽しい日々が続いていった。

謙二も友達と一緒に、美羽を誘って食事をしたり、飲みに行ったりしていた。


この頃から謙二は美羽の仕事が終わるのに合わすようになっていた。

そんな謙二に全く気づいていない美羽は

(ラッキー!今日も同じ時間だったんだぁ)

と、無邪気に喜んでいた。
駐車場に行くと謙二がいて
『腹減ったから、飯付き合えよ!』

今日もまた友達が一緒だと思った美羽は

『はぁ~い』

と、返事をしたものの…
(たまには、二人ってのは無いのっ!…って無理だよね…)


時間が過ぎても友達は来なかった。

不思議に思った美羽は

『みんな、お仕事まだなんですかねぇ~』

『…誰も誘って無いよ…
今夜はお前だけしか、声かけて無いからなっ…』

(えっ!)
美羽はドキドキしていた。
『ごめん…俺と二人きりはイヤだったか?』

謙二が真面目な顔で話す。
美羽は首を横に振る事しかできなかった。

『なぁ…イヤじゃなかったら…たまに話したり、食事に行かないか?』

美羽は素直に嬉しかった。
『私でいいんですか?』

『お前を見てると…落ち着くんだよ。そんな事言える立場じゃないのも分かってるんだけど…』

『何かあったんですか?』

『イヤ…ただ、素直にそう思っただけだよ…』


美羽は気持ちが押さえられなくなっていた。

(今夜は…素直になりたい)
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