声にならない言葉
言葉
いつの間にか…

謙二が
『お疲れさん!』と、美羽の肩を叩く時は会える合図になっていた。

会えない時は…

必ず謙二は美羽に電話をしてきた。


何故なのか…
いけない事をしているのに、お互い普通の恋人同士の気持ちにさせられていた。

ただ…声が聞こえるだけで…

ただ…姿が見えるだけで…
美羽は幸せだった。


そんな美羽に謙二は

『俺の都合ばかりでわるいなっ…』

そんなふうに言ってくれる謙二が大好きだった。


お互い…愛してる…
そんな言葉を口に出す事は無かった。


口に出すのが恐かったのか…

ただ…二人話をしたり、一緒にいられた事が嬉しかった。


ある日…
美羽は何気なく

『今夜は何時までいられそぅ?』
と、謙二に聞くと

『何時でもいいけど(笑)なんで?』

『今日は私が作りたいから…』

『本当に!すっげぇ嬉しいよっ!』

子供の様に喜ぶ謙二。



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